【2024年の見どころ】
今年の題材は、「雪の吉野山 激闘」。制作者は北村隆氏。文治元年(1185年)12月、源義経が家来とともに吉野山に入るが、金峯山寺の僧兵が敵になり吉野水分神社まで逃げる。屈強な荒法師が迫り、佐藤忠信が義経の身代わりとなり戦い、覚範を打ち取り一行を救う。雪の吉野山での義経の家来 佐藤忠信と荒法師と呼ばれていた横川覚範の激闘を描いたものである。
ねぶた本体については、白を基調とした雪の表現の散らばる表現と、松の木の細やかで繊細な表現に注目していただきたい。加えて、北村隆さん特有の繊細であり色鮮やかな着物の柄は今年も目が離せないところだ。
【歴史】
全国の運送会社の代表で組織している会合が偶然ねぶたの時期に青森で開催され、その時に日通のねぶたが参加していることにヤマト運輸関係者が刺激を受けた。特に宅急便の仕組みを作ったヤマト運輸2代目社長が、ねぶた祭りを気に入り当時の担当者が出陣に向けて準備することになった。出陣までに2~3年かかっており、観光ねぶたとして出陣していた「大和山(青森県教区連合会)」の枠が空いたところにヤマトが推薦されて運行することとなった。当時担当していた社員がねぶた師の穐元鴻生氏と顔見知りで、穐元氏がデビューするタイミングに依頼することができた。また、穐元氏の一番弟子である大白我鴻氏に意思を継いでいただき3年ほど依頼した。その後北村隆氏に依頼し現在に至る。毎年、青森の主管支店長が団体責任者、労働組合の青森の委員長が運行責任者として参加している。実行委員は青森市内の集配しているドライバーで、日中が忙しい。メンバーはヤマトの社員だけで構成しているため、仕事をしながら稼働の合間をみて会議を行っている。
【運行団体の特徴】
出陣日は3,4,5,6,7日。
ヤマト運輸ねぶた実行委員会の特徴は何といっても「安全」に配慮した運行だ。運送業で培ったその安全への高い意識は、ねぶた運行にも活きているという。近年、温暖化の影響でねぶた開催時期も厳しい気候の中、今年の水車(給水を担う山車)が軽量化されるそうだ。重量による負担の軽減に加え、人員の削減も目指すとのことだ。
加えて、ヤマト運輸ねぶた実行委員会では、今年度初めてねぶたに用いる発電機の燃料を「バイオ燃料」に代替する試みをする。ヤマト運輸全体として、持続可能な社会の実現に向けて「カーボンニュートラル配送」に注力しており、今年のねぶた祭においてもバイオ燃料を使用することでSDGsへの貢献を図っている。
また、今年も4日の運行において「福祉ねぶた」が決定している。障がい者の方々と共にねぶた運行に参加するこの取り組みだが、20年以上続いている、同実行委員会においてはもはや伝統的な取り組みである。障がい者の参加者は毎年ねぶた楽しんでいる様子であり、今や参加者は300名を超えるそうだ。
ねぶた本体や運行はもちろん、社会問題に対し、たゆまず取り組み続けているヤマト運輸実行委員会に、今年もぜひ注目していただきたい。
【協賛】
協賛による前ねぶたの出陣はない。協賛はELM、ファミリーマート、関係各社(トラック業者等)である。そのほか提灯協賛として個人や通常業務の顧客が入っている。
文責:内海 空
写真: 2024年 ヤマト運輸ねぶた実行委員会『雪の吉野山 激闘』 制作者:北村隆