【2024年の見どころ】
東北電力ねぶた愛好会では、その理念に基づき東北にまつわる題材を採用している。今年の題材は「浪漫海峡
義経飛龍」。制作者は立田龍宝氏。源義経は平安時代末期に兄の追撃を逃れて奥州平泉に落ちのび、最期を遂げたとされるが、一説には蝦夷を目指して逃げ延びたとも言われている。平泉から竜飛崎に至る途中、強風荒れ狂う海を渡れなかった義経は観世音菩薩の化身とされる白髪の翁に三頭の龍馬を授かり、海峡を渡ったることができた。その後、蝦夷から大陸に渡り、成吉思汗となりモンゴル帝国を築いたとも伝えられている。外ヶ浜町三厩には龍馬山・義経寺があり、義経の海路伝説の浪漫が県内で数少ない神仏混交で今もなお多くの参拝者が訪れている。源義経のように力強く、これからも東北の復興と発展に寄り添い続けるという強い思いが込められている。
ねぶた本体の見どころとしては、白馬の勇ましい様子が挙げられるだろう。これまで立田龍宝氏の制作するねぶたにおいて、「馬」が描かれることは珍しく、今作では立田氏の馬に注目したいところだ。
電力ねぶたは、今年は記念すべき出陣55回目という節目の年であり、例年にも増して気合が入っている。
【歴史】
東北電力ねぶた愛好会は昭和23年から運行を開始した。経営理念が「地域繁栄への奉仕」ということもあり、地域との共栄を目的に始めた。現在のコーポレートスローガンも「より、そう、ちから。」であり、地域に寄り添い、地域の伝統文化の継承と地域の盛り上げに貢献するため運行を続けている。東北電力ねぶたはオイルショックの影響を受け、昭和 48年に出陣を休止した。しかし青森市内に在住するねぶたを愛する有志からの復活を望む声が多くあり、労働組合が中心となって東北電力ねぶた愛好会を立ち上げ、昭和 59 年に運行を再開した。運営資金は愛好会員からの会費を中心に、関連企業や取引先からの協賛金により賄っている。現在も労働組合と会社が協力してねぶた運行を行っている。
【運行団体の特徴】
今年も出陣日は8月2,4,5,6,7日。東北電力ねぶた愛好会として、会員の一体感を忘れずに運行に臨んでいる。青森ねぶたに参加することで地域に寄り添い、日々の感謝を伝えたいとも考えているという。その心意気は、跳人(はねと)参加者が全員「花笠」を着用している様子に見られるだろう。他団体では花笠の着用を条件としていないケースが多いが、同愛好会では跳人参加者に花笠の着用を義務付けている。このこだわりには地域へのリスペクトを感じることと思う。理念を具現化する同愛好会の跳人集団は、古き良き青森ねぶたを感じられるとともに、地域へ寄りそう姿勢を見ることができることだろう。また、同社のねぶたを制作するねぶた師、立田龍宝氏との交流も行っており、講演会を開催するなどして愛好会全体の士気を高めて本祭に臨んでいるという。
【協賛】
基本は愛好会会員の会費。なお、関連企業や取引先からの協賛金による協力もいただいている。
前ねぶたはかいじゅうステップの1台。
文責 内海 空
写真: 2024年 東北電力ねぶた愛好会『浪漫海峡義経飛龍』 制作者:立田龍宝