【2024年の見どころ】
制作者は昨年、デビューと同時に優秀制作者賞を受賞した野村昴史氏である。今回のねぶたの題名は「錦繡戸隠紅葉狩」だ。世界に誇る伝統文化である「歌舞伎」の演目の一つを世界最高のペーパークラフトとして紹介された「ねぶた」で表現している。歌舞伎における二枚看板を、2025年1月に合併する青森銀行とみちのく銀行の両行に見立てて制作している。新たに誕生する「青森みちのく銀行」を歴史ある歌舞伎へなぞらえ、伝統を未来へ紡いでいく象徴にしたいというメッセージが込められている。また、両行が新たな銀行になる最後の舞台を、歌舞伎のひのき舞台になぞっている。送りは「山神夢のお告げ」。野村氏は昨年の不動明王の顔が気に入り、今年の送りの鬼女の顔は、不動明王の赤ちゃんの頃の顔をイメージして作ったそう。
野村氏は今回の作品について以下のように語っている。「紅葉狩は能や歌舞伎、神楽などで演舞が継承されている。また、ねぶたでもよく作られる題材である。青森ねぶたが未来永劫キラキラと光輝く道が開き続けられ継承されることを願っている。そのためには、平和であること、経済が豊かであること、一人一人が互いを尊重すること、文化の歴史を守りつつ革新性があること、地域の個性を見つめることから始まると思っている。古典的な題材、構成を表現していきたく今回は紅葉狩とした」。
【運行団体の歴史】
2022年4月に青森銀行とみちのく銀行の経営統合により、プロクレアホールディングスが設立された。今年で2回目の出陣となる。
【運行団体の特徴】
今年の出陣日は8月2,4,5,6,7日である。プロクレアねぶた愛好会という任意団体があり、会社の正式なプロジェクトから愛好会がねぶたを任せられて運営している。愛好会のメンバーは囃子方を含め総勢400~500人。プロジェクトを支えるコアメンバーは30人程度。跳人は自由参加である。また、県外の銀行のお客様を招待して一緒に跳ねる。
囃子は昨年約8割が初心者であったが60回以上の練習を重ねて7位に入賞。今年は新規メンバーも入れて約200人が参加し、改めて基本から学んだ上でやっていくそうだ。定期的に練習をしていて、ピークだと1週間に2回行う。また、並行して囃子方の動画を撮り、振り返りながら自主練習も行っている。曳き手は全員が職員で、プロクレアの野球部員も活躍している。今年のねぶたは髪の毛がとても重く、重心が前になるため負担が大きいそうだ。
【協賛・前ねぶた】
協賛はプロクレアホールディングスグループ各社である。前ねぶたは青森銀行の「aomo」、みちのく銀行の「トムとジェリー」、プロクレアホールディングスのロゴマークの3つが登場する。青森銀行とみちのく銀行の前ねぶたは今年で最後の運行となる。
文責:阿部仁菜
写真:2024年 プロクレアねぶた実行プロジェクト『錦繍戸隠紅葉狩』 制作者:野村昂史