【2024年の見どころ】
青森山田学園の大型ねぶたは、昨年デビューした2年目の塚本利佳さんが担当する。今年のねぶたの題材は『宮本武蔵と巨鯨』。これまでねぶたの歴史の中でも、これほど大きな鯨が登場したことはない。正面から見える鯨は腹を上にして、生き生きと表現されている。送りには人魚、タツノオトシゴ、そして二頭目の鯨がいる。全体的としてオーシャンブルーを基調とした青いねぶたである。そのほか正面にはウミガメやエイなど、海の生物が登場する。まさしく近年の異常気象や環境汚染に対し、警鐘を鳴らすとともに、海の美しさを表現した作品となっている。ちなみに送りにはひそかに「チンアナゴ」が紛れており、ぜひ見つけ出してほしい。
青森山田学園の魅力は何と言っても若さゆえの熱気だろう。教育機関からの参加ということもあり、若さはもちろんのこと、自由と規律が共存した、統率の取れた、まさに「学生らしい」運行に注目である。
【運行団体について】
1971年、青森大学開学3年目に初の出陣を飾る。当時最大の後援者であった青森県信用組合が、理事長・木村正枝氏に働きかけたのがきっかけである。まだ経営学部のみで、学生数も120~130人。ねぶた責任者であった斎藤守太教授を先頭に、大学全体で参加した。当時は、現在のように青森山田学園ではなく青森大学として運行。また、先頭の役員団の前に青森山田高校のブラスバンドが演奏しており、「学生らしいねぶた運行」が行われていた。
その後1989年(平成元年)より毎年出陣しており、最初に賞(田村麿賞)をとったのが1994年の『宇治川の先陣争い』。当時の制作者は、現在の第6代ねぶた名人の北村隆氏であった。この年は跳人賞も獲得しダブル受賞であった。北村隆氏は平成2年から令和4年にまで青森山田学園のねぶた制作を受け持っていた。その間、田村麿賞、ねぶた大賞受賞歴は6回。特に平成18、19、20年と3年連続でねぶた大賞を受賞し、青森山田学園のねぶたの全盛期を作った。
青森山田学園として出陣するようになったのは2003年(平成15年)から。そこから「学園ねぶた」の愛称で出陣し続けている。OB、そして学園関係者の力が、「学園ねぶた」の源だ。
【運行について】
なんといっても学生生徒中心の元気ある跳人が魅力。曳き手は部活の学生が中心である。そこに教職員・OBが加わって運行される。囃子はOB中心の「隆櫻會」。會の名称は、受賞全盛期に理事長であった故「木村隆文」氏の「隆」、学園のトレードマークの「桜」からとっている。青森市の教育機関としては唯一単独で大型ねぶたを運行しており、青森山田学園から輩出される全国的にも有名なスポーツ選手の活躍が、毎年運行に花をそえている。
文責:佐々木てる
写真:2024年 青森山田学園『宮本武蔵と巨鯨』 制作者:塚本利佳